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§10 連続関数の性質 I
今回の目標は、分数冪関数や指数関数等、これまで話題に挙がった事のある初等関数を厳密に構成する (ための準備をする) 事です。そのためにまず、実数値連続関数に関するある重要な定理を示します。
今回から、実数空間 (あるいはその部分集合) 上で定義された実数値関数に対して焦点を当てて見ていきたいと思います。まずは関数の表し方や初等的な関数の紹介をし、その後、数列ではなく「実数をある実数に近付ける」という意味での極限の概念について解説します。多くの初等的な関数は (適当な集合の上で) 連続 (あるいは更に滑らか) になっていますが、直観的なイメージでは「-平面上に描画したグラフが途切れる事無く繋がっている」と考えられる関数の連続性は、厳密には上のような極限の概念を使って、イプシロン・デルタ論法を使って定義される事となります。
実数空間 内の空でない適当な部分集合 を 考えます。ここで、集合の包含関係の記号 … 続きを読む
今回は §6 の続きです。実数の連続性公理と同値な性質を紹介しながら、実数全体からなる集合 (実数空間1) の持つ基本的な性質を紹介していきたいと思います。
我々が考えようとしているのは主に「実関数の微積分」であり、基本的に「実数に対して定義された実数値の関数」を相手にしていく事になります。今はその準備段階として、数列の収束性や実数の性質等を扱っています。
実数に対して定義された関数の事を調べるためには、まずその「実数」について十分把握しておかなければなりません。そこで、現代数学においては、「実数空間 とは以下の性質を満たす集合の事である」と定義 (約束) し、これらの性質を実数の公理として (正しいルールとして) 認めた上で議論を進めていくのが標準的です23… 続きを読む
※弊所 web site メンテナンスのため今回の更新が大変遅くなってしまった事をお詫び申し上げます。
前回は数列の収束や発散等の定義を与えた上で、実際にいくつかの数列についてその極限の振る舞いを定義に従って調べてみました。今回はまず、数列の極限を調べる際に有用な「直観的には明らかな性質」をいくつか紹介します。
いきなりですが、以下の命題が成り立ちます。
命題 1. を数列とし、ある に対して
… 続きを読むここでは通常大学 (理工系) 初年度で学習するような、現代数学の初歩となる初等解析学、所謂微分積分学について解説をしてみたいと思います。
数理ファイナンスや金融工学においては様々な数学的理論が用いられますが、その基礎となるのはやはり現代の基礎数学と言える「微分積分」と「線形代数」です。例えば標準的 (古典的) なポートフォリオ理論において、投資対象となる金融資産のリスク・リターンの構造をベクトルや行列で表すのが普通であり、それらに対する「適切な (最適な) 投資比率」を決定するために解析学における様々な道具を活用する事が出来ます。更には、Black–Scholes の公式で有名な金融派生商品 (デリバティブ) の価格付け理論においては確率解析 (確率過程論) という理論が本質的に使われているのですが、その全ての基礎にあるのが初等解析学と言えます1。
微分積分学という名称で呼ばれる位ですので、そこで論じられる対象は「微分」と「積分」が主となります。しかし、高校数学でも微分や積分は既に (多かれ少なかれ) 扱われていると思います。現代数学における (初等的な) … 続きを読む
本講座で用いる記号 (notation) についてここでまとめておきたいと思います。最初に通して読むのではなく、必要に応じて適宜振り返って参照していただければ十分です。どれも一般的な記法ですので、必要に応じて他の文献もご参照いただけますと幸いです。