初等解析学 (微分積分学) 入門 §17

2019/2/23
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§17 級数

今回は久々に数列に関するお話で、「無限に並んでいる数列を (順番に) 足し続けたらどうなるか」について考えます。「無限に足し続ける」と言っても、数学的には「 個足す」という操作において の極限を考える事に他ならないので、今までと全く異なる新しい概念が登場するわけではありません。しかし、前回 §16ここで触れられているように、級数 (数列を無限に足し合わせたもの) ならではの興味深い話題も見られます。

 

級数の定義

数列 が与えられた時、それらを全て足し合わせたもの … 続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §16

2019/2/9
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§16 関数の積分 II

§13 以降、微分、積分、微分ときて今回は再び積分が中心です。多くの初等関数の積分は、§15 の定理 2, 3 を用いる事で、まさしく「微分の逆演算」として計算する事が出来ますが、積分に関するそれ以外の重要な道具として更に部分積分や置換積分といった公式があります。これらを使って様々な関数の具体的な積分計算が可能となりますが、それだけでなく部分積分公式はまた「(滑らかな) 関数を『多項式の無限和』の形に展開する」という所謂 Taylor 展開への橋渡しの役割も担っています。今回は、微分積分の基本定理や部分積分公式を用いて、滑らかな関数を「多項式 + 誤差項 (剰余項)」の形で表現する Taylor の定理に迫っていきたいと思います。

 

寄り道: §15 命題 6 の証明

いきなり寄り道からのスタートとなりますが、まずは前回やり残した最急降下法アルゴリズムの収束性についてここで証明を与えます。あくまで寄り道なので全てを理解して次に進まなければならないわけではなく、読み飛ばしていただいても構いません。… 続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §15

2019/1/26
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§15 関数の微分 II

§13 で微分を、§14 で積分を導入しました。今回は再び微分に焦点を当てます。微分と積分を行ったり来たりしながら話を進めていく事になりますが、§13 でも触れたように、微分積分学の基本定理を使いながら積分を通して微分の性質を明らかにしていくのが狙いです。

 

微分積分学の基本定理 II

§14 の定理 3 では「関数を積分してから微分すると元に戻る」というバージョンの基本定理を扱いました。定理番号を変更してステートメントを再掲します。

 定理 1. なる区間 上の連続関数 に対して

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初等解析学 (微分積分学) 入門 §14

2019/1/12
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§14 関数の積分 I

前回 §13 に関数の微分を導入したばかりですが、今回は関数の (Riemann) 積分を定義します。前回から急にガラッと話が変わってしまいますが、初等解析学の礎とも言える微分積分学の基本定理によってこれらの概念は深い繋がりを持つ事になります。

 

Riemann 積分の定義

実数値関数 の積分を考えていくのですが、微分を考える際には を開区間としたのに対して、今回は を閉区間とします。また閉区間として 続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 番外編 I

2019/1/12
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連鎖律と誤差逆伝播法: 1 次元の場合

こちらの投稿で紹介した連鎖律 (合成関数の微分公式) が、(階層型) ニューラルネットワークにおける自動微分法の一種である誤差逆伝播法 (backpropagation) においてどのように活用されているのか、その雰囲気を味わうために、ここで「一次元のとても単純なニューラルネットワーク (パーセプトロン) による教師あり学習」を取り上げて見ていきます。なお、以下で登場する 等の関数は全て 上で微分可能であると仮定しておきます。

 

概要

入力データ 続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §13

2018/12/29
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§13 関数の微分 I

今回からいよいよ関数の微分に進んでいきたいと思います。と言っても、微分とはある関数の極限値で定義されるものなので、これまで扱ってきた関数の極限 (あるいは数列の極限) を使えば特別新たな概念が登場するというわけでもありません。しかしながら、関数の微分を導入すると、関数の持つ性質をより詳しく調べる事が出来るようになり、また物理学やファイナンスその他多くの分野への応用の幅も大きく広がります。

 

微分の定義

上で定義された実数値関数 を考えます。説明の都合上、当面の間は は開区間であると考えて下さい。この時、点 における関数 の微分について以下の定義を与えます。

 定義. 関数

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初等解析学 (微分積分学) 入門 §12

2018/12/15
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§12 連続関数の性質 III

前回 §11 は具体的な関数の構築の話で終わってしまいましたが、前々回 §10 に引き続き今回は連続関数に関する一般論の話題が中心です。特に有界閉区間上に与えられた連続関数に関する一般的な性質を紹介します。これら全てを今すぐ使うというわけでは必ずしもないのですが、いずれ積分を定義する時に真価を発揮します。その雰囲気を味わうべく、今回も簡易的な例を使ってその威力を伝えてみたいと思います。更に「寄り道」として、初等解析学を少し離れた発展的な話題や金融実務との関わりについても紹介します。

 

有界閉区間上の連続関数 I

ここでは を有界閉区間とし、 上で定義された連続関数について調べてみます。これまで紹介してきた初等関数も ( が定義域に含まれている限り) への制限を考えればここでの話を適用する事が出来ます。

まず直観的なイメージとして、続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §11

2018/12/1
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§11 連続関数の性質 II

今回はまず、指数関数を作るところから始め、その基本的な性質を調べます。そして指数関数を使って更に、対数関数等のいくつかの初等関数を定義します。

 

指数関数の構成 I

前回 §10 まで、Napier 数 を数列 の下での極限として与え、また有理数 に対して を定義しました。今回は、§7続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §10

2018/11/17
@tk

§10 連続関数の性質 I

今回の目標は、分数冪関数や指数関数等、これまで話題に挙がった事のある初等関数を厳密に構成する (ための準備をする) 事です。そのためにまず、実数値連続関数に関するある重要な定理を示します。

 

中間値の定理

閉区間 上で定義された実数値連続関数 を考えます1。すると は、… 続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §9

2018/11/3
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§9 関数に対する極限と連続性 II

前回に引き続き、関数の連続性についての基本事項を見ていきます。前回 §8 の最後にも触れた通り、§3 で扱った数列の極限に関する基本性質は関数に対してもほぼそのまま適用出来るので、それを使えば「連続関数の和は連続関数」等の基本的な性質を示す事が出来ます。まずは本論に入る前に、証明を先送りにしていた §7 の命題 4 と §8 の命題 1 を示します。

 

の否定

§7 でも一言触れたように、… 続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §8

2018/10/20
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§8 関数に対する極限と連続性 I

今回から、実数空間 (あるいはその部分集合) 上で定義された実数値関数に対して焦点を当てて見ていきたいと思います。まずは関数の表し方や初等的な関数の紹介をし、その後、数列ではなく「実数をある実数に近付ける」という意味での極限の概念について解説します。多くの初等的な関数は (適当な集合の上で) 連続 (あるいは更に滑らか) になっていますが、直観的なイメージでは「-平面上に描画したグラフが途切れる事無く繋がっている」と考えられる関数の連続性は、厳密には上のような極限の概念を使って、イプシロン・デルタ論法を使って定義される事となります。

 

実数値関数

実数空間 内の空でない適当な部分集合 を 考えます。ここで、集合の包含関係の記号 … 続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §7

2018/10/6
@tk

§7 実数の性質 II

今回は §6 の続きです。実数の連続性公理と同値な性質を紹介しながら、実数全体からなる集合 (実数空間1) の持つ基本的な性質を紹介していきたいと思います。

 

初等解析学の「始め方」

我々が考えようとしているのは主に「実関数の微積分」であり、基本的に「実数に対して定義された実数値の関数」を相手にしていく事になります。今はその準備段階として、数列の収束性や実数の性質等を扱っています。

実数に対して定義された関数の事を調べるためには、まずその「実数」について十分把握しておかなければなりません。そこで、現代数学においては、「実数空間 とは以下の性質を満たす集合の事である」と定義 (約束) し、これらの性質を実数の公理として (正しいルールとして) 認めた上で議論を進めていくのが標準的です23続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §6

2018/9/22
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§6 実数の性質 I

今回は §4 で扱った数列の極限と関連して、実数空間に要請される公理、特に実数の連続性に触れながら、実数の基本的な性質について解説していきたいと思います。

 

実数の公理

既に §4 でも触れた事ですが、そもそも「実数とは何か」という問いに対して、現代数学では「以下の性質を満たすような集合 (の元)」というのが大まかな答えになります。

  1. で割る」以外の加減乗除が自由に出来る
  2. 任意の 2 つの元に対して順序 (大きさ) の比較が出来る
  3. 数直線上において実数は隙間無くギッシリ詰まって存在している
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初等解析学 (微分積分学) 入門 §5

2018/9/8
@tk

§5 数列の極限 IV

引き続き数列の極限に関するトピックです。今回は §1 で触れた Cesàro 平均について解説します。特に、今回は「どうやって証明を与えれば (考えれば) 良いか」という発想のプロセスに対して焦点を当ててみます。

 

Cesàro 平均

次の定理を示す事が今回の最初の目標です。

 定理 1. 実数 に収束する数列 に対して次が成り立つ。

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初等解析学 (微分積分学) 入門 §4

2018/8/25
@tk

§4 数列の極限 III

前回から引き続き数列の極限に関するトピックです。今回は、§1 でもご紹介した Napier 数に焦点を当ててみたいと思います。

 

はじめに: 再投資と複利効果

数理ファイナンスを意識した例…という事で、今「年率利回り の安全資産」への投資を考えてみます。例えば、 ならば年率利回り といった具合です1続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §3

2018/8/11
@tk

※弊所 web site メンテナンスのため今回の更新が大変遅くなってしまった事をお詫び申し上げます。

§3 数列の極限 II

前回は数列の収束や発散等の定義を与えた上で、実際にいくつかの数列についてその極限の振る舞いを定義に従って調べてみました。今回はまず、数列の極限を調べる際に有用な「直観的には明らかな性質」をいくつか紹介します。

 

極限の加減乗除

いきなりですが、以下の命題が成り立ちます。

 命題 1. を数列とし、ある に対して

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初等解析学 (微分積分学) 入門 §2

2018/6/30
@tk

§2 数列の極限 I

数列の収束

を実数列とします。 §1 で触れたように、 がある実数 収束する、即ち であるとは以下が成り立つ事を意味します。 … 続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §1

2018/6/16
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§1 はじめに

ここでは通常大学 (理工系) 初年度で学習するような、現代数学の初歩となる初等解析学、所謂微分積分学について解説をしてみたいと思います。

数理ファイナンスや金融工学においては様々な数学的理論が用いられますが、その基礎となるのはやはり現代の基礎数学と言える「微分積分」と「線形代数」です。例えば標準的 (古典的) なポートフォリオ理論において、投資対象となる金融資産のリスク・リターンの構造をベクトルや行列で表すのが普通であり、それらに対する「適切な (最適な) 投資比率」を決定するために解析学における様々な道具を活用する事が出来ます。更には、Black–Scholes の公式で有名な金融派生商品 (デリバティブ) の価格付け理論においては確率解析 (確率過程論) という理論が本質的に使われているのですが、その全ての基礎にあるのが初等解析学と言えます1

微分積分学という名称で呼ばれる位ですので、そこで論じられる対象は「微分」と「積分」が主となります。しかし、高校数学でも微分や積分は既に (多かれ少なかれ) 扱われていると思います。現代数学における (初等的な) … 続きを読む

初等解析学 (微分積分学) 入門 §0

 

公開: 2018/6/16
最終更新: 2019/2/6
@tk

§0 記号について

本講座で用いる記号 (notation) についてここでまとめておきたいと思います。最初に通して読むのではなく、必要に応じて適宜振り返って参照していただければ十分です。どれも一般的な記法ですので、必要に応じて他の文献もご参照いただけますと幸いです。

 

論理記号

  • は「任意の」という意味です。例えば
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